最終発表

期間限定、写真に関して

写真家の澁谷征司さんと一緒に担当した15回の授業も終わり、最後発表する機会があるよ、というので見に行ってきました。

京都市街から北へ数10分、それほど街から離れてなくても天候が街と違う。そんな山に囲まれた京都精華大学。そのなかでも人知れずあるギャラリー、それはそれで嫌いじゃないけれど「作ったものを社会でどう使ってもらうか?」という命題からは「場所がもう社会から遠い」そんな発表会場。


学校へ向かう道すがら、そしてギャラリー。


街に出るとたくさん観光客もいて、有象無象に街の一部になって「見てもらう」というと、デザインはそんな雑多なところを交通整理する標識的な作業とも例えられ、そんな渦中に飛び込んだ方がいいように思う。

一方で、今回の会場のようなホワイトキューブ、アートの最良な見せ方とされてる環境、白い空間。なおかつ街から山奥へわざわざ見に来てもらうわけで「見せる」向いてる方向が逆を向いてる感じ。


今回作ったモノたちは、もちろんアートでないとなると、勘違いはこうして生まれる的な現場に立ち会うようで、ボヤいてばかりだけど、それでもフィニッシュワークするには良い環境。だからちゃんと仕事をフィニッシュ、終えてないと発表も何もない、何も言えない。またボヤく。

というわけで、社会に出ることを意識する授業だし、それらしくまとまるのも恐いのでこちらへも発表です。と体裁よく書いてますが備忘録です。(展示順に書いてるので、順番に意味はありません。あと一部の写真は澁谷さんの拝借)



さて、



題材。
お父さんになる前のお父さんの撮った写真。ネガを焼き直すことから始める写真の在り方。

過程。
題材がこれだけでいいのだけど、ファインアートなところを脱線してもらい、彼女らしさに寄せ、イラストがとても良かったので、写真と共にイラストを使ってディレクションしてもらうことに。

内容。
焼き直したお父さんの写真を、娘がイラストで演出する格好。

結果。
写真は、撮るだけのものではない面白さと、ライフワークを文字通りカタチにした面白さがあって、またどこかで出会いたいと思える、長いスパンで制作を続けて欲しい作品になる。

反省みたいな感想。写真に正直に向き合いすぎたのかもで、自分のアングルや再構成、トリミングするなどして彼女の視点が強調されてもよかった。





題材。
「レコーディングをする」「レコードをつくる」という憧れの出来事を現実にする。

過程。
レコーディングすること自体が命題、そのためにレコードジャケットを作る、他付随したいろいろな演出をディレクションし、デザインしてもらう。例えばそれはライブ会場の物販のイメージだったり、ステージセットだったり。

内容。
写真やデザインを脇役に、レコーディングするための演出は、何が必要なのかいろいろ考えて思いつたらやってみる。とバンドの練習のようなアートワーク。

結果。
レコードを作るに至る、聴いてないけど。ここに行き着くまで、バンドの他のメンバーも巻き込みいろいろなトライ&エラーを重ねていて、それが随想的というか、曲作り的?過程が濃かった。

反省みたいな感想。途中作ったものや、アイデアを捨てすぎでもったいない、でも自分のキャパは広がったんだと思う。





題材。
下着を作りたい。

過程。
縫製は出来る人に頼み、アイデアや素材になる写真撮影、デザインに集中してもらうことを提案するも、自ら縫製することを選ぶ。

内容。
彼の部屋、中華料理屋の入り口などの私的な感情が絡む写真を素材に下着の生地を作る、一歩間違えば痛い…モノになりそうなところをさらりとこなす。

結果。
主役の下着はもちろん、着衣を見せるためのルックブックの撮影、ブックデザインが気付いたら出来ていて(かなり褒めてるつもり)誤解を恐れず言うと、ゴミのような意味わからないはずのモチーフを、彼女がまとめると不思議と清潔さに溢れる。

反省みたいな感想。もしかして、凄いんじゃないか?と気付くのが最後の最後でごめん。もうちょっとエラーした作業もみたかったし、ブック作りも見たかった。




題材。
山はでかくて広い、という普遍的なぼんやりとしたそれを目の当たりにしたときの感動を再現する。

過程と内容。
「その想いを持ち帰りたい。だから写真を撮ってる」といったことを言い「じゃあ撮ったそれをどうしよう」という会話を聞いた違う学生が「カーテンにしたら?」と、本人「あ、いいかも」一足飛びに決まる。

結果。
実際、登山して撮影してきた写真がカーテンになる。流れ星じゃなく、衛星の軌道が映ってる現実感がなんだかいい。

反省みたいな感想。何か作るときの衝動って今回の友達とのやりとりみたいな、小さい出来事だったりする。そんなのに素直に乗る、その良さ出ているようでいい感じ。その上で、もうちょっとエラーした作業もみたかった、例えばパン作りがうまいと聞いたので、それも作品に入れちゃうとか。




題材。
セルフブランドをイメージしたワンピースの制作。

過程。
今までに撮影した写真を素材に、テキスタイル、パターンデザインを誰よりも果敢にトライ。タイリング、ハーフステップなど自然と出来ていて、面白いパターンがたくさん。

内容。
当初はフランスへ旅立つ友人のためのワンピースという題材だったところを、後に自分が着たいワンピースにと題材が変わっていたり、

結果。
その移り気なところが彼女らしく、姉妹のような2着が出来た。

反省みたいな感想。スランプなんて当分来なそうで、他人に回答を求めるより、自分の最適解を探すように作業したら良さそう。 彼女と以下3名は、洋服を作るという課題を自分で決め、それに邁進。洋服の縫製はファッション科の学生と共にチームワークで制作。作業を分解すると、
1 アイデア出し、2 素材収集、3 テキスタイル制作、4 洋服のイメージ、5 洋服のパターン制作、6 洋服の仮縫、7 洋服の本縫、8 仕上がった洋服の演出、 その中の上記と下記の彼女は、最後の洋服の演出が出来てなく、洋服を作ることで終わってるのが残念。最初のアイデア出しからの最後ディレクションができず不明に。グラフィックデザイン科なのに、これが欠けてるのが残念。洋服作ってくれた人に、そういった「演出する・見せる」返し方が出来てないのがもっと残念。(ちなみに、この上下2点着衣画像は澁谷さん記録用の写真、各自でも撮れれば良かった)




題材。
小学生からの友人たちを題材に、ジャケットを作る。

過程。
当初は古着のリメイクだったところを、仕上がった生地の出来の良さから一着を作ることに。

内容。
成人式の写真を見せてくれる。子供の時からの友達と、大人の境を祝う成人式という場所に居合わせる一期一会感を追いかけるようなドキュメント写真。

結果。
その成人式をフォーマルな社交場と捉え、ジャケットを作る。

反省みたいな感想。成人式というパブリックな出来事と、それに居合わせる彼女たちだけの特別なプライベートな写真を、その後撮り下ろし、最後ディレクションした何か一冊を残せずもったいない。ここまで作った。その上で見えてくる「ちょっとこれもやってみようかな」という部分が、作るということの本質だったりする。「でもそれは課題外だし」と、広げられず。




題材。
水族館で撮ってきた写真、クラゲをモチーフに、その透けてる印象にワンピースを制作。

過程。
アクセサリーやワンピース、コーディネートで考え進める。

内容。
レイヤードに生地を重ね透ける感を追う。仕上がってきた生地の裏面の裏写りしている表情が面白く、それを見つけてレイヤードはやめ、リバーシブルのワンピースに即座に変更、その判断も素敵。

結果。
コーディネートされたチョーカーのようなアクセサリーと、リバーシブルなワンピースを作る。

反省みたいな感想。着衣を見せるカタログ、ルックブックをぎりぎり作ってみせてくれたけど、イラストやコラージュがとても良いから混ぜ込んだらもっとよかったかも。そういう意味で、手法ごとに制作の垣根を自分で作らず、何でもアリ感が出ると良いのかも。




題材。
「わたしはゴスロリが好きで、コスプレも好き」ときっぱり。自分が着るドレスを制作。

過程、内容。
生地は、セルフポートレイトをパッチワークし一枚の生地に、それをファッション科の学生と一緒にドレス作り。

結果。
セルフプロデュースの進行も作業も磐石で、自らが被写体の写真で作った生地でドレスを作り、自分が着、自分を撮る、最後セルフポートレイトを撮るにあたって(シンディシャーマンというアーティストも知った上で)そのような演出を試みる。

反省みたいな感想。あとはクオリティーに対しての自分との戦い。この世界感で戦うとなると、狂った人はたくさんいて、どこを自分の強みにするかを問われる時がくるので、そのことを考えた上でもいろいろ寄り道、脱線しても良いのかなと思う。




題材。
ネイルを作りたい。

過程と内容と反省。
一番最初話を聞いたとき「ネイルでしょ」と既成概念を持つ自分が恥ずかしいくらいに、過剰書きされたアイデアを見せてくれた一瞬、それは撤回。そのアイデアはあえてここに書かないけど、とても個人的な視点も、見る人に伝わる面白さがあった。最終的に、100枚くらい?のネイルを試作、同じ数だけの写真素材をそのアイデアにそって用意したことを考えると、やりきった感は感じる。なので全部を見せれれば良かったのに、

結果、本人厳選のもののみを発表。授業中、薬剤の臭いを気にして違う教室で作業してたとのことで、あまり過程を見れず反省。




題材。
封筒を作る。

過程。
当初、バッグを作りたい、ということでファッション科の学生にバッグを作れる人を探したけど見つからず、自分で作るということに。でも縫製することより、デザインや写真についての時間に集中してほしいので、内容が近い封筒を提案。(僕たちが縫製を手伝おうと、そのための時間を見つけてるうちに時間がなくなる。ごめん。)

内容と結果。
「グロテスクな植物が好き」と写真素材を収集。授業中に植物園へひとり撮影行ったりフットワークがいいし、完成予想図がしっかりしていたので、封筒のみ集中して制作することになってもブレず良かった。最後の紙の選定も、自分の完成予想図に従って選べて大正解。僕も勉強になりました。




題材。
食卓を作る。

過程。
テーブルクロス、お皿、と食卓そのものを作るということ。それと写真との関係にいろいろとアイデアを広げる。

内容。
食卓を囲むというありふれた時間と、食卓を飾る面白い演出を考えることは、意外に反対を向いていて、それぞれを探そうとすると、どんどんそれぞれの着地点が離れてしまうのに苦労。

結果。
いろいろトライ&エラーをしながらもパターン柄に落ち着く。

反省みたいな感想。その際の会話が、僕も思いの外アイデア出しになったのだけど、先に僕が思いついたことを言うと、それは相手の考える余地を奪うようなことになってしまった。途中、トライ&エラーしていた自分だけが感じる「ちょっとした不思議やズレ」みたいな視点、写真の編集が面白かっただけに、それをすくい取れず僕が残念、反省。



以上。というわけで、結構みんな天才。

追記、制作予算一人あたり27,000円。生地などのプリント制作費がほぼ。クオリティーをあげるなら、それ以降の縫製費などの捻出方法を考えないといけないと思うし、作ったものへの演出も必要、仕上がったモノを見てもらうというと等価交換?お金以外の代替は?何だろ?などが次回の課題かも、備忘として。

2016.3.24