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先人のやってきた模様の表現について「古きを訪ねて新しきを知る」その新しき部分を、僕から目線で紹介です(文脈のはなし)
今までは、どんな模様を学生に向け参考に紹介してるのかな?と基軸めいたものがあるのか聞くと、特にないとのこと。その去年の資料を見ると主に北欧系(というと語弊があると思うので)もっと端的に例えると手紙社さんが開催されている布博系を主な基軸としているようでした。(聞くと、そういう訳ではないとのこと。この回の後半に拝借掲載させてもらってます。)というわけで、そうじゃない部分の穴埋めが、僕の役目かなと思い紹介です。
前置きが長くなりましたが、あともう少し。模様は、デザインの中でテキスタイルと呼ばれたりすることが多いです。テキスタイルというジャンルは、だいたい何?そう定義が曖昧らしく、デザインジャーナリストの川上典李子さんも、そうおっしゃっていました。体系化されていないとのことで、言うのも自由と自分の意見をまとめてみました。
1つは、カラーフィールド・ペインティングに影響を受けた歴史があるように感じます。あとのもう1つは、アーツアンドクラフツ運動からの影響。テキスタイルはこの2つ、カラーフィールド・ペインティングとアーツアンドクラフツ運動の流通商業化と感じます。
それら含めいろいろを浅く見ていきます。
カラーフィールド・ペインティング、1940年代にニューヨークで起きたアートの文脈です。
カラーフィールドは「画面外に広がる世界」という定義のミニマルアートの文脈です、それ以前にフリーハンドのラインが豊かなところも特徴でした。
ちなみに、彼らニューヨークで起きた抽象表現主義に影響を与えたのが、草間彌生さんです。のちにアメリカ抽象表現主義は、カラーフィールドとも呼ばれるようになります。
ロバートマザーウェル 抽象表現主義運動の創設者(だそうです)。
豊かです、子供の描く絵を、アートのようだ。なんて言いますが、この辺りのアートを指してるのだと感じます。
ケネスノーランド
どこかで見たものもあります、たくさんの人が影響を受けたと思います。
モーリスルイス
こんな絵を家に飾りたい、飾れる広い部屋が欲しい。と考え始めてる時点で、空間との関係が生まれてます。絵が空間に広がっています。
バーネットニューマン
男前な絵です、線だけを題材に一生を絵に捧げました。絵を見て欲しいので、いちいちのコメントをヤメますね。
ヘレンフランケンサーラー
岡田謙三
マークロスコ カラーフィールドではないらしいですが、入れておきました。
追記: 2022年にDIC川村記念美術館でカラーフィールドをフィーチャーした展覧会がありました。そこでの説明に「経年で技法に終始していった」というような評がありました。カラーフィールドは技法の顕在化により形骸化していった歴史のようです。
それ以前のイギリス、1900年くらいにアーツ&クラフツという運動がありました。
ウィリアムモリスは、一般的な模様らしい文脈。
ウィリアムモリス
言わずもがな。1900年頃は、教科書にも出てくる産業革命で、機械に人間の仕事が奪われる、という空気感よりおきた自然回帰的装飾。現代のAIやCGに対しての反動にも通じるかもしれません。イギリスで起きたアーツ&クラフツ運動は、東に伝わるにつれ世紀末主義やアールデコに変化していき、その後の日本で起きる民藝運動にも影響を与えています。
ジョナサンサンダース
この流れからだとトーンジャンプが凄いですが、プリントワークから製品までを手掛けるファッションレーベル。いきなりニッチと言われそうですが、前述のモリスの今版と感じます(イギリスらしさを感じます)。
ジョナサンサンダースが独立する前、学校卒業後にアレキサンダーマックイーンのプリント担当になります。アレキサンダーマックイーンは、卒業制作が認められて27歳でジバンシーのチーフデザイナーにいきなり抜擢される規格外さ。ファッション業界の意識の底上げをした人。
僕が大学在学中や卒業した時期とかさなってることもあり、とても印象に残るデザイナーたちです。
ステラマッカートニー
ビートルズ、ポールマッカートニーの娘。エシカルやエコみたいな概念、革製品を使わないなど環境配慮の意識を一段ステージ引き上げた人。
いつもプリントワークが目に留まります。(ここでは、ボタニカル柄をpickupです)
イギリスのプリントの歴史を感じれる人たちの紹介でした。
1980年の代名詞、メンフィスの文脈
ナタリードゥパスクエ
1980年の代名詞になってるエットーレソットサスの作ったイタリアの会社が、メンフィスです。そのメンバーの一人。
ミッケーレデルッキ
彼もまたそのメンフィスにいた人。
すごいなと思うことに、二人とも時代を作った上、いくつも次に来る時代を乗り越え、今なお現在進行形のデザイナーです。
上記のアーツ&クラフツとメンフィスの両方の文脈(な気がします)
イーリーキシモト
プリントワークから製品までを夫婦で手掛ける、奥さんが日本人、旦那イギリス人、二人とも大学でファッションとプリントを勉強。
フランスの文脈
エルメス、創業180年のメーカー
プリントワークに、カレ(正方形)という意味のスカーフが有名、新旧のプリントワークいろいろ。こちら180年前にスタート、それと次に紹介するのとセットでみると少しフランスが見える気がします。
アントワネットポワソン
こちら2013年にスタート、18世紀の壁紙を作る技法でプリントワークをしている3人組み。ただ古いものを再現してるだけでないアプローチとクオリティ。
かたやこちら7年前にスタート、
上記の2つ、エルメスとアントワネットポワソンの時間を超えて成り立つ相関だけでも、フランス人の文化への眼差し、上手さを感じます。
バウハウスの文脈のスイス、きっとそのアンチのアートバーセルの生まれる環境(バウハウス系は割愛です)
クリスチャンフィッシュバッハ
創業200年のテキスタイルメーカー
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クラウディア カヴィエッル
2015年、オペラシティ開催のスイスデザイン展といのうのがあって、それを見たときのこと。このアカデミックな展覧会に異色を放った作品、その上一番面積を占有していたデザイナー。きっと今後のスイスの代名詞になるのかな?と感じた人。調べると多様なプリントワーク、得体の知れなさが大好きです。
ドリスヴァンノッテン
ベルギーのアントワープ王立学校から6名有名なデザイナーが出ていて、アントワープ6と呼ばれたりと一時代ひとジャンルを作りました(6名の特徴を定義するとしたら、川久保玲に強く影響を受けてること)
そのうち、この人だけプリントワークが特徴です。一応この文脈に入れました。
バウハウスは割愛、について。
バウハウスという学校がドイツにあって、1919年から14年間だけ開校、その後ナチスによって閉校された幻のような学校がありました。そこでは、合理主義的・機能主義的な生産性を上げるための芸術を追いかけました。美しいものを作るには?という数式を作ろうとしました。その後のモダニズムです。
以下、全くの私感です。模様の現在の在り方って乱暴に言って不要の美、生産性では語れないポストモダンかな思います。
そしてモダニズム、バウハウスは、生産性からの模様の最適解を出せていないと感じます。事実その後のポストモダンでサーフェスは、多様に花開きます。
動物や昆虫の身体に模様があるように、模様などのサーフェスは有用なもの。ミニマルであったりシンプルというモダニズムは、万有に争い人間のエゴがベースにあるように感じます。
ポストモダンとは
wikiより。進歩主義や主体性を重んじる近代主義や啓蒙主義を批判し、そこから脱却しようとする思想運動のこと。
またはモダニズム(近代主義)に行き詰まりを見出し、そこから逃れようとする芸術などの文化的諸分野上の潮流。脱近代主義のこと。
そう現在の模様・サーフェスの成り立ちは、このポストモダンのように自由に根ざしていると感じます、とても楽しいもの。
そしてドイツ、PCを画材として使ってる文脈
ウィウィ
レディメイドや、ブリコラージュ。PCを画材として使ってる。バネみたいなペーパークラフツを構成した上、写真に撮ってたり、スカーフ然としたモチーフをデッサン、など規制概念の壁をテクノロジーで超えてます。
弊社もここの文脈でしょうか、エナメル.
自分たちに視座があるとしたら、紙も布も同じものとして、また素材自体も視覚要素として扱っています。石や木などの素材に対して、視覚的な表層というのがあってもいいなと感じています。
オマケで、タイポグラフィーとしての模様
デヴィッドカーソン
アメリカ、エディトリアルで一時代を気付いた人。あらためて見るとサーフェイスデザインっぽい。実際、プリントワークもやってるようなので、
タイポを素材としてのプリントワークを紹介。
カラーフィールドの文脈にあたる進化系?現在進行形
パトリシアウルキオラ
長島りかこ
最後に、手紙社さんの布博的なものと平たく例えましたが、こちらは、今回一緒している講師の近藤さんがまとめてくれたもの(拝借掲載しています)
ヨブス
マリメッコ
粟辻博
脇坂克二
ミナペルホネン
鈴木マサル
ひびのこづえ
岡 理恵子
みなさんのお名前、敬称略です。といったところです。いろいろな文脈を見てもらいました。